命を燃やすためのブログ

人生に対峙する日々の記録。

「普通」を人に押しつけていないか。『コンビニ店員』の感想

村田沙耶香『コンビニ店員』を読みました。

これは結構、知らず知らずのうちに他者を傷つけてしまっているのではないかと大いに反省する、気付きのある小説でした…。

理解できる範囲のものしか受け入れない世間

主人公の恵子さんは36歳で、コンビニ店員歴18年目。

小さい頃からどこか浮世離れしており、世間一般の常識や価値観が欠落していてずっと生きづらかった恵子さん。恋愛経験もありません。

が、マニュアルにのっとった模範的な行動をとることで「コンビニ店員」という者になれて、「普通の人」として社会に接続できるこの職業は、恵子さんにとっては最適な天職なのでした。

 

が、コンビニバイトは、あくまで一般論としては、積極的に選ばれる職業ではありません。コンビニバイトを長年続けているなんてワケアリかと周囲や世間は不審がり、なんでなんでと聞いてくるので、やむなく恵子さんは生きるための対策をとります。

体が弱いとか、親の介護があるからやむなく、などの設定のでっちあげ。

 

世間はそういう、自分が理解できるストーリーがあって初めて安心し、恵子さんを受け入れるのでした。

 

「普通こうだけどなんで違うの?」は、ナシ

人それぞれ違って当たり前とは思っているのですが、もしかしたら私も、自分と考えが違う人に対して好奇心から色々聞いてしまっているかもしれません。

が、聞かれる側である恵子さんのこんな言葉を見るとショックでした。もし人をこんな気持ちにさせていたらと思うと。。

 

皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。私にはそれが迷惑だったし、傲慢で鬱陶しかった。

 

皆が不思議がる部分を、自分の人生から消去していく。それが治るということなのかもしれない。

ここ二週間で14回、「何で結婚しないの?」と言われた。「何でアルバイトなの?」は12回だ。とりあえず、言われた回数が多いものから消去していってみようと思った。

 

まぁ好奇心とか、純粋に相手を知りたいから聞くのはまだアリとしても、「普通こうなのにあなたはなぜ違うの?」という態度は暴力的すぎる。

今の時代、普通なんてないのだから。「違い」があるだけであって、そこに良い悪いはないという前提でコミュニケーションをとらないとなと思いました。